6. マツダのCASEへの取り組み
6.1 概要
マツダは、マツダらしい「人」を主体としたアプローチで、新たなカーライフ、クルマ文化を提供することで顧客に「人生の豊かさ」を提供したいと考えており、「人間中心」という考え方に基づいた開発を進めています。
CASEへの取り組みに関しても、「運転する人に対してどのような価値をもたらすのか」「人が本来持つ能力を最大限発揮してもらうにはどうすればいいのか」という発想から、あらゆる仕様の決定を進めています。
6.2 コネクティッド
6.2.1 コネクティッドサービス「マツダ コネクティッドサービス」
2019年、マツダは「マツダ コネクティッドサービス」とスマートフォン向けアプリ「MyMazda」をリリースしました。現在搭載されている主な機能としては、安心・安全(コンディションモニター、バークアラーム通知)、便利(うっかり通知、リモートコントロール、カーファインダー)、家にいても使える機能(リモートモニター、目的地送信)があげられます。また、機能によって、3年間や10年間の無料期間を設けられ、エンドーユーザーからのコネクティッドサービス利用を促進しています。
6.3 自動運転
6.3.1 自動運転コンセプト「CO-PILOT」
マツダの6.3.1. 自動運転コンセプト「CO-PILOT(コパイロット、航空機の副操縦士を指す)」は、運転行為自体は意義があり、「運動」と同様な価値があるとの考えに由来します。
マツダは人間中心の考えの元、自動運転技術に取り組んでおり、あくまで人間の運転を前提としながら事故削減を目指しています。具体的には、運転手の不注意や異常を検知される際に、システムが車両を制御し、安全な場所に車を退避させます。将来的には脳機能低下を予測する技術の実用化を目指すとのことです。
6.4 シェアリング
6.4.1 広島県におけるライドシェアの実証実験
2018年、マツダと広島県、広島県三次市の3者はライドシェアサービスの実証実験を始めたと正式発表しました。高齢者らが電話やスマートフォンのアプリで依頼すると、複数の依頼者を乗り合いで駅や診療所、スーパーなどにドライバーが送迎してくれる仕組みで、過疎地で移動に困る「交通弱者」の問題を解消して地域活性化を図る目的です。初めてライドシェアに取り組むマツダが配車を予約する専用アプリを開発、車を無償提供しました。
出典:実装に向けた先進的技術やデータを活用したスマートシティの実証調査(その 12)報告書
6.5 電動化
6.5.1 マツダのEVの方針
2021年6月、マツダは技術開発の長期ビジョン「サステイナブル Zoom-Zoom宣言2030」を開き、2030年にEV(電気自動車)の販売比率を25%とするための電動化戦略を発表しました。
7. スバルのCASEへの取り組み
7.1 概要
スバルはCASEの流れが加速するなかでも、「SUBARUらしさ」をより際立たせていくことを宣言しています。
「すべてを自社で開発するのではなく、限られた経営資源を、強みと特長を伸ばすべき分野に選択・集中し、お客様に認めて頂ける、他社にはない独自の「付加価値」創出に向けた活動を進めていく」方針です。
7.2 コネクティッド
7.2.1 コネクティッドサービス「STARLINK」「マイスバル」
スバルのコネクティッドサービス「SUBARU STARLINK」は、緊急通報、SOSコール、ロードサービスの手配、故障・盗難装置作動・リコール通知機能を備えています。コネクティッドアプリ「マイスバル」では、スバルからのお知らせや車の基本情報が確認でき、会員限定サービス、緊急時の連絡などが利用可能です。車のリアルタイムの状態確認やリモートからの操作などの機能がなく、将来的に機能の拡張が期待されます。
7.3自動運転
7.3.1 ADAS「アイサイトX」
スバルは2020年、自動車専用道路においてハンズオフ運転を可能にする最新ADAS「アイサイトX」の実装を開始しました。GPSや準天頂衛星「みちびき」などからの位置情報と3D高精度地図データを組み合わせ、車線単位の高精度な制御を実現しました。
準天頂衛星「みちびき」やGPSがクルマの位置を正確にとらえ、さらに3D高精度地図データがその先の道路を把握。快適なレーンキープを実現しながら、初めてで知らない道でもカーブ前で減速したり、疲れる渋滞時のハンズオフ走行をアシストしたりと、高速道路における安全運転をサポートします。
7.4 シェアリング
7.4.1 中古車サブスクリプションサービス「SUBARU サブスクプラン」
2021年3月、運転支援システム「アイサイト」付きのクルマを月額定額制で提供するサブスクリプションサービス「SUBARU サブスクプラン」を中古車で開始しています。
「SUBARU サブスクプラン」は、税金や自動車保険料、メンテナンス費用を含めて月額4万円程度からアイサイト付きのSUBARU車に乗ることが出来るサブスクリプションサービスです。ステレオカメラを使った独自の運転支援システム「アイサイト」を搭載するSUBARU車の「安心と愉しさ」を、これまで以上に身近なものとしてお客様に提供する狙いです。
申し込みはインターネットより受け付け、SUBARU販売店が車両の引き渡しとメンテナンスを含めたサービスを担当します。現時点(2022年5月)では、「SUBARU サブスクプラン」は神奈川県と新潟県のみサービスを提供しています。
7.5 電動化
7.5.1 スバルのEVの方針
2021年5月の中期経営ビジョン進捗報告において、2030年までに全世界販売台数の40%以上をBEVもしくはHVにする目標を立てています。また、2030年代前半には、生産・販売するすべてのスバル車に電動技術の搭載を目指しています。
その第一弾として、トヨタ自動車と共同開発するSUVモデルのEV SOLTERRA(ソルテラ)を2022年からグローバル展開する計画です。両社で共同開発したEV専用プラットフォーム「e-SUBARU GLOBAL PLATFORM」を採用し、両社それぞれの強みを持ち寄ることで、EVならではの魅力を持つ「もっといいクルマ」づくりに取り組んでいます。
8. CASEの各社の比較
これまで日本国内自動車メーカー各社のCASEへの取り組みについて見てきましたが、ここではそれぞれのメーカーのCASEの各領域における取り組みをまとめていきたいと思います。
メーカー名 |
CASEへの取り組みの特徴 |
トヨタ |
CASEの各領域について、優れた実績を残し、また情報発信も多く行っています。まさに業界をリードするモビリティカンパニーと呼べるでしょう。特に、2021年12月14日のEV戦略の方針発表からEVに本腰を入れる姿勢も窺えます。 |
スズキ |
軽自動車領域にフォーカスをしてCASEの対応を行うという独自のCASE戦略を立てています。また、日本・インド市場においてシェアリングの事業も伸長しています。 |
ホンダ |
日本で唯一自動運転レベル3に成功していることからもわかるように、自動運転に関する高い技術が特徴です。ソニーと共にEV開発を行うなど、他社との協業についても、近年は積極的な傾向が見られます。 |
日産 |
仏ルノー・三菱自動車とのアライアンスに加え、様々なIT企業と連携をすることによってCASE対応を進めています。EV開発を筆頭に、それらによって得られた知見やノウハウは他社に先行している箇所も多く存在します。 |
マツダ |
「人間中心」という考え方に基づき、CASE時代に向けて開発を進めています。またCASEの各領域を意識しており、2020年11月の中期経営計画においてもそれぞれに対して打ち手を示すなど、全ての領域に意欲的に取り組む姿勢が見て取れます。 |
スバル |
CASEに対しては、自社で行える範囲を選択・集中して対応していきたいという方針です。自動運転の技術である「アイサイトX」の開発や、EVへの取り組みとして全てのスバル車の電動技術の搭載を進めるなど積極的な姿勢が見られます。 |
9. 最後に
100年に一度の大変革の時代と言われる自動車業界で、CASEはその方向性を示す重要なキーワードとして、多くの議論・検討がなされています。
今回各社のCASEに関する取り組みを見てきましたが、各社異なるCASE戦略が窺える結果となりました。CASEの推進の方向性はメーカーによって異なり、全方位のCASE対応をしていくメーカーもあれば、領域を絞って対応していくメーカーも存在します。
それは各領域の取り組み内容にも通じていて、たとえばコネクティッドサービス一つをとっても、そのサービスの展開の仕方や、サービス自体の内容はメーカーによって異なります。IT企業との提携に関しても、どの会社とどのように進めていくのかメーカーによって特色があり、注目点の一つです。
技術のトレンドが目まぐるしく変わる昨今、ときには技術・資本提携を行いながら自動車メーカー各社はしのぎを削っています。CASE戦略について着目することは、対象のメーカーの動向を知る有効な手段といえるでしょう。