5Gについて


最近さまざまな場面で「5G」を目にしたり、耳にしたりする機会が数多くあります。
5Gとは、第5世代(Generation)移動通信システムのことで、2020年から順次、日本国内でサービスを開始しています。
そこで、改めてこれまでの各世代の移動通信システムから5Gまでどのように変化し、今後どのようなことが実現できるのかを整理していきたいと思います。

これまでの移動通信システムの歴史

各世代の移動通信システムの特徴を簡単に纏めると以下のような歴史をたどってきました。

世代 特徴
1980年代 1G 携帯電話(アナログ電波で音声のみ)
1990年代 2G メール、インターネット
2000年代 3G iモード、ezweb(情報のプラットフォームとして検索等が可能に)
2010年代 4G 動画・スマホゲーム

そして日本では2020年、5Gのサービスが開始しました。
その特徴は大きく3つあります。

5Gの3つの特徴

1.高速大容量通信(通信速度が4Gの20倍)
2時間程度の映画であれば数秒でダウンロード完了します。

2.超信頼・低遅延(遅延速度が4Gの10分の1)
動画視聴でちょっと遅れたり、固まってしまうことがありますが、これが人間では感知で きない程度の精度になり、安定した通信が可能となります。

3.多数同時接続(4Gの10倍)
一定の場所にたくさんの人が密集しているときや、災害時等、利用者そのものが多いときに繋がりにくい等の事象が発生しますがこれが大幅に改善されます。

よりリアルタイムな操作がインターネットを介して行えるため、あらゆる分野への効果が期待されており、具体的には以下のようなものがあります。

5Gで実現できること

① 働き方改革の推進
新型コロナウィルスの影響でリモートワークが進みましたが、途切れたり、固まったりという問題が起きています。
「高速大容量」通信により、あたかも同じ空間にいるような感覚でビデオ会議を行ったり、 大容量のファイルをスムーズに共有したりできるので、リモートワークが一般化していきます。これにより、仕事と出産、育児、介護などを両立しやすくなります。

② 4K・8Kのライブ配信
5Gの「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」は4K・8Kをはじめとする高精細な映像のライブ配信を実現します。
自宅で視聴しているユーザー、スタジアムのような広い会場にいる観客に、迫力ある映像を配信することができます。

③ 自動運転
ネットワークに繋がった「コネクテッドカー」は、車両の状態や歩行者の位置、交通状況、デジタル地図「ダイナミックマップ」などの情報を常時サーバーと通信。非常時のハンドル制御や隊列走行によって、交通事故・交通渋滞は低減すると考えられています。
また、路線バスが廃止されつつあるような、地方の公共交通機関が利用しにくい地域でも、自動運転タクシーで好きな時に、好きな場所に出かけることができます。

④ 医療改革
遠隔技術を活用し、遠方にいる医師が手術中に助言する「遠隔手術支援」が進みます。
さらに将来には、現場の医師ではなく、場合によっては海外にいる医師がロボットを利用した「遠隔手術」が可能になります。

⑤ 建設現場、災害復旧
人が現場にいることなく、ドローンを活用した高精度な測量や建機の遠隔・自動操縦等をし、ショベルカー等の建設用機械を遠隔操作し、確実で安全な施工を実現することができます。

⑥ マーケティング
街頭のデジタルサイネージでは、より高精度、高解像度の映像が利用でき、蓄積データを活用した広告配信が可能になります。
さらに、近年では、窓ガラスの中に透明なディスプレイを埋め込んだ広告も開発されています。窓型広告を5Gと組み合わせれば、看板などを設置しなくても窓が広告メディアとして機能します。

⑦ 農業改革
様々な情報を収集する農業用センサーに加え、給餌ロボット、散水・薬剤散布ドローンなどの実現により、自宅からの畜産/農作業管理の実現が期待できます。

⑧ 防災、減災
街の中に多数設置された高精細な映像センサーによりデータを収集、活用する ことで、災害情報を網羅的に把握するとともに、被災者に最適な避難経路情報を 迅速に届けることができます。

上記のような活用方法に留まらず、5Gで実現できることは無数に考えられます。
また、同時接続数が4Gの10倍であり、一度に接続することができる台数が増える分、中継装置などの設置コストの削減のメリットもあるのです。
しかし5Gに変わるデメリットもあります。

5Gのデメリット

5Gにより、IoTが普及することで、ネットワークに接続される機器の数は爆発的に増え、ネットワークに繋がる機器が増えるほど、サイバー攻撃のターゲットが増えることになります。IoT機器は2020年時点、世界で約300億個超とも言われています(総務省/「5Gの今と将来展望」より)
また、大容量・高速通信により、ネットワークのトラフィック量が増え、窃取対象となる情報量も増えることになります。

まとめ

5Gは、社会インフラを一新させる可能性があるほどの通信システムです。私たちの暮らしが豊かになることが期待されます。
しかし、同時にセキュリティに対する危険性も高まるものです。5Gにより、IoTが普及することが予想されるため、より多くの情報がインターネットを介してやり取りできるようになり、強固なセキュリティ対策を意識していく必要がありそうです。


執筆者紹介
T.K  コンサルティング事業部

事業会社(総合商社IT企画担当、ネットベンチャー企業役員、消費財企業情報システム部部長)およびコンサルティングファーム(Big4)を経て現職。
主にSCMの業務改革に携わり、ITの上流工程を主導。
事業会社では情報システム部門を統括し、中期計画の策定・予算の管理から各種システムの保守、運用、サービスデスクを管理。
幅広い業界におけるプロジェクトでの実績を有する。IT戦略とその推進サポートを得意とする。